酵素にはタンパク質以外の補酵素が必須!分解酵素の種類や働き変性を徹底解説!

タンパク質は生物の重要な構成成分のひとつですが、酵素として働くタンパク質が最も多いといわれています。
酵素は、生きるための「代謝」全てに関わっている物質です。
その酵素はタンパク質を主成分として構成されているため、タンパク質が熱や酸性に弱い性質は酵素にも引き継がれます。
また、酵素を生み出す細胞や機能も、タンパク質がベースになっています。
つまり、タンパク質は酵素以上に、身体の機能や臓器・細胞・遺伝子に至るまで様々な形で関わっているのです。
私たちは、これらのタンパク質を食べ物から摂取して「アミノ酸」に分解することで、はじめて体内に吸収して必要な種類のタンパク質を生成しています。
生成されたタンパク質は、酵素により化学反応が付加されることで様々な機能をもちます。
酵素を生成するにはタンパク質が必要不可欠ですが、その酵素が働くには補酵素が必要不可欠となります。
酵素をより理解するためにも、
- 酵素の種類やタンパク質分解酵素の重要性
- タンパク質の消化・分解・吸収の仕組み
- タンパク質不足で身体の機能低下や肥満が起こる
- タンパク質とペプチドとアミノ酸の違い
- タンパク質分解酵素の利用のされ方
- タンパク質分解酵素を多く含む食品
など、タンパク質のことが理解できれば、必然的に酵素のことも理解することができるはずです。
ここでは、私たちの身体や酵素にとって重要な「タンパク質」について徹底的に解説していきます。
Contents
酵素は化学反応を自在に制御する触媒の働きをもつ
酵素は必要に応じて、生体の細胞内で生成されます。
酵素は栄養素の消化・分解・吸収・燃焼・排泄など全ての生命活動をスムーズに進行させる「触媒」の働きをもつ物質です。
生体内では生命活動のために多くの化学反応が同時に進行していて、何千種もの酵素が常に働いています。
生体内で起こる化学反応を「代謝」といいます。
「代謝」には、基礎代謝・新陳代謝・エネルギー代謝など様々なものがあります。
私たちの身体は細胞が集まって形成され、常に新陳代謝を繰り返して新しく入れ替わっています。
それらの細胞が正常に機能するには、働きやすい環境が大切になってきます。
それには質の良い血液と、細胞同士で連絡を取り合うための物質が円滑に行き渡る必要があります。
そのためにも様々な代謝が、正常でなければなりません。
酵素は、これらの代謝に全て関わっています。
▶酵素の働きや効果については「酵素の効果を徹底解説!酵素栄養学の医学的根拠と酵素を摂る本当の意味!」で詳しく解説しています。
こちらの記事では、「酵素が必要な理由」や「酵素の代謝と消化の重要な働き」や「詳しい酵素の効果」について分かりやすく解説していますので、こちらも参考にしてください!
酵素の主成分はタンパク質
酵素はタンパク質を主成分として構成されているため、一般に酵素はタンパク質からできているといわれています。
また、酵素を生み出す細胞や機能もタンパク質がベースになっています。
つまり、タンパク質を知ることは、酵素や私たちの身体の成り立ちや機能、逆に病気の原因を知ることに繋がるのです。
酵素の働きは現代医学でも完全には解明されていませんが、酵素をより理解するのであれば「酵素」と「タンパク質」のことを正しく理解する必要があります。
まずは、酵素とタンパク質の関係から見てみることにしてみましょう。
酵素とタンパク質の関係~酵素にタンパク質が大切な理由~
人間に限らず全ての生物は、一つ一つの細胞が集まってできています。
細胞を構成するのは70%が水分で、タンパク質は約15%と2番目に多い成分です。
酵素を知るためにも、酵素とタンパク質の関係を正しく理解しておきましょう。
ではタンパク質は、身体の中でどんな働きをしているのでしょうか?
タンパク質はあらゆる生命現象を支えるもの
人間の体内には、約3~10万種類のタンパク質があるといわれています。
タンパク質は、身体の様々な機能を果たす重要な役割を担っています。
私たちは、これらのタンパク質となる材料を食べ物から摂取して、アミノ酸まで分解して吸収することで様々な種類のタンパク質を生成します。
タンパク質の種類は、
・身体の構造を維持するタンパク質
・様々な化学反応に関わる酵素タンパク質
・栄養素を血液で全身に運ぶタンパク質
・ホルモンの調整や免疫に関わるタンパク質
・貯蔵に関わるタンパク質
に分けられます。
なかでも体内に存在するタンパク質は、酵素として働くタンパク質が最も多いといわれています。
タンパク質には様々な種類がありますが、どうやってできるのでしょうか?
酵素タンパク質は遺伝子の設計図をもとに作られる
近年になりDNAが遺伝子の本体であり、その情報によってタンパク質が作り出されていることが明らかになりました。
遺伝子の中には、タンパク質のアミノ酸配列の情報「設計図」が入っています。
必要な種類のタンパク質は、アミノ酸の結合により細胞内で合成されます。
つまり細胞は、タンパク質の製造工場の役割をしているのです。
しかも、どの細胞でも同じタンパク質が同じ量だけ作られるのではなく、タンパク質が必要な場所で必要な種類のタンパク質を作り出します。
では、そのタンパク質はカラダの中で何をしているのでしょうか?
なかでも細胞膜にある酵素タンパク質は、重要な働きをしています。
細胞膜にある酵素タンパク質は生命活動のエネルギー源を作る
細胞膜は、水や電解質のような水溶性の物質は通過できなくなっています。
そのため特殊なタンパク質が、細胞内外へ物質を運ぶ役割を担っています。
また、生きていくために必要なエネルギーは、食事から取り入れた糖や脂肪などから作られますが、実際に使える形のエネルギーとして蓄えるには酵素の働きが必要です。
そのエネルギーが、生命活動のエネルギー源となる「ATP」です。
生命活動のエネルギー源(ATP)は、細胞膜タンパクを使って「ATP合成酵素」によって作り出されています。
細胞内にある酵素タンパク質は細胞機能に関わる
細胞内には酵素タンパク質や、遺伝子の働きを調節するタンパク質などがあります。
細胞内のタンパク質の維持に、中心的な役割を果たしているのが「プロテアソーム」です。
タンパク質の研究が進んだことで、タンパク質分解がタンパク質合成と同様に重要な働きであることが分かってきました。
プロテアソームは酵素複合体で、不要なタンパク質の分解・細胞周期・DNA修復をはじめとしたあらゆる細胞機能制御など、様々な生理機能に必要とされる重要な物質です。
近年、プロテアソームが機能しなくなることで、癌・神経疾患・免疫疾患など様々な難治疾患を引き起こすことが明らかになりました。
酵素は20種類のアミノ酸から構成される
酵素の構造は。20種類のアミノ酸がベースになっています。
アミノ酸はタンパク質の原料で、生体内で使われるアミノ酸は20種類あります。
このうち、人間の体内で作ることができない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といい、体外から取り入れる必要があります。
タンパク質は、アミノ酸が鎖のように繋がって作られています。
アミノ酸の種類によって身体への働きは様々で、全てのアミノ酸が体内で大切な役割を担っています。
タンパク質の性質や働きが異なるのは、20種類のアミノ酸の順番や組み合わせによるタンパク質の形の違いによります。
タンパク質の形はアミノ酸がどういう順番で、どれだけ繋がっているかで違ってきます。
タンパク質不足は太る原因のひとつでもある
タンパク質は、筋肉や臓器・遺伝子にまで様々な形で関わっています。
<タンパク質の主な役割>
・臓器・筋肉・皮膚・骨や歯・毛髪や爪など身体の材料となる
・ペプチドホルモンや神経伝達物質を構成する
・免疫機能を高める
・体内酵素を構成する
タンパク質は様々な役割をもっているため、不足すると身体に不調をきたす原因となります。
では、タンパク質不足は、身体にどんな影響を与えるのでしょうか?
タンパク質不足は筋肉量が減少して基礎代謝量が落ちる
ダイエットのために低カロリーの食事をしていると、身体に必要なエネルギーを確保できなくなります。
体内に入ってくるエネルギーが減少すると、身体は危機感から筋肉を分解して生きていくために必要なエネルギーを捻出します。
なぜなら、筋肉を作る材料となるのが「タンパク質」だからです。
体内のタンパク質を不足させてしまうと筋肉が落ちて、基礎代謝量が低下することで太りやすく痩せにくい体質を作り出してしまうのです。
タンパク質不足で身体の機能低下が起こる
タンパク質は筋肉や骨・臓器から髪の毛や爪まで、あらゆる身体づくりに使われる栄養素です。
また、 ホルモンや酵素・免疫体を作る材料にもなっているため、身体の機能を維持するためにも欠かせないものです。
タンパク質が不足すると必要なタンパク質へと作り替えができないため、筋力などが衰えるだけでなく身体の機能低下を引き起こし体調を崩しやすくなるのです。
タンパク質は食事から摂ることが基本
体内のタンパク質は、合成と分解が繰り返されています。
髪や爪が伸びるように目に見えるものだけでなく、筋肉や臓器なども古くなった部分は分解されて体外へ排泄され新しく入れ替えられています。
タンパク質の合成に利用されるタンパク質の約半分は、体内に貯蔵されたアミノ酸から再利用されます。
残りのタンパク質は、食事から摂取した新しいタンパク質が利用されます。
そのため、毎日コンスタントに食事から適量のタンパク質を補う必要があるのです。
効果的なタンパク質補給で、参考にしたいのが「アミノ酸スコア」です。
アミノ酸スコアとは、アミノ酸のバランスを数値化したものです。
タンパク質の栄養価を示すもので、バランスの良いものほど数値が上がります。
アミノ酸スコアが100の食材は、肉類・魚類・卵・牛乳・大豆です。
これらは単体で、バランスの良いタンパク質を補給できる食材です。
タンパク質の機能と働き
タンパク質は、生物の重要な構成成分のひとつです。
アミノ酸が数個繋がったものを「ペプチド」といい、
無数の数のアミノ酸が繋がったものを「タンパク質」といいます。
タンパク質はアミノ酸の結合の数や種類や順番の違いで、多種多様な形のタンパク質が作られます。
体内のタンパク質は、酵素やホルモンの代謝調節・物質輸送・生体防御・エネルギー源など全ての体内機能に関わっています。
私たちが知る最も身近なタンパク質といえば、
「ケラチン」・・・毛髪・皮膚・爪などを構成するタンパク質
「コラーゲン」・・・肌内部の組織を形成するタンパク質
などがあります。
タンパク質は化学反応を受けることで機能する
タンパク質はDNAの遺伝情報にもとづいて生成されるのですが、実はこれだけではタンパク質は機能をもつことができないのです。
タンパク質が機能をもつためには、生成された後に化学反応が付加される必要があります。
その化学反応にも、全て酵素が関係しています。
化学反応のなかでも特に、タンパク質への「リン酸化」と「糖鎖」の反応には重要な役割があります。
■リン酸化の化学反応・・・タンパク質を合成するための細胞から細胞への情報伝達機能
タンパク質はリン酸化されることによって、細胞核の中にあるDNAをもとにして新しく必要なタンパク質に合成されていく機能をもちます。
■糖鎖の化学反応・・・栄養素から細菌まで体内のあらゆるものを感知するアンテナ
タンパク質は糖鎖されることによって、全細胞と情報交換をして免疫やホルモンの働きなど、全ての機能に適切な処理を働きかける機能をもちます。
つまり、タンパク質は酵素が働きかけることで、様々な機能をもつことができるのです。
▶酵素の化学反応については「こ酵素の働きなしで生物は生きられない!ダイエットから化学反応まで徹底解説!」で詳しく解説しています。
こちらの記事では、「酵素の働きや消化との関係」「酵素の特質」「酵素と代謝機能との関係」などを分かりやすく解説していますので、こちらも参考にしてください!
酵素タンパク質の性質と変性
酵素はタンパク質が主成分なので、タンパク質の性質が大きく影響しています。
そのため酵素は、タンパク質の性質を引き継いだ性質をもっています。
酵素タンパク質について、もう少し詳しく見てみることにしましょう。
酵素はタンパク質以外に補酵素が必要不可欠
酵素が正常に働くためには、タンパク質以外のビタミン・ミネラルの補酵素が必要不可欠です。
酵素の働きをサポートして、分解・合成を円滑に進める役割を担っているのがミネラルやビタミンなどの「補酵素」です。
酵素のタンパク質は、補酵素が必要なアポ酵素といいます。
補酵素とアポ酵素が結合したものをホロ酵素といい、この状態ではじめて触媒作用をもつことができるようになります。
酵素タンパク質には基質特異性がある
酵素は、触媒として働くので自身は反応前後で変化せず、特定のひとつの反応相手(基質)物質とだけ結合する性質をもっています。
酵素が作用する物質を「基質」といい、反応の結果できた物質を「生成物」といいます。
酵素は、結合する相手と形がぴったり一致しないと作用しません。
つまり、一つの酵素は一つの基質と反応して一種類の化学反応だけを行うのです。
これを「基質特異性」といいます。
生体内での代謝は、連続していくつもの反応が行われて目的の生成物が作り出されます。
そのため、多くの酵素が存在しています。
酵素タンパク質の変性と失活が起きる体内環境の重要性
酵素タンパク質は、体内環境により構造が変化してタンパク質自体の性質が変化します。
これを「変性」といいます。
また変性によって、酵素タンパク質が本来の働きを失うことを「失活」といいます。
どのような体内環境で「変性」が起きるのでしょうか?
酵素が環境で働きが変わるのはタンパク質の性質があるから!
酵素は、酸性度(pH)と温度が適した環境になっていないと全く働かないのです。
酵素はタンパク質が主成分のため、タンパク質と同様の変性が起きることで構造が変化します。
酵素が最もよく働く温度を「最適温度」といいます。
■酵素タンパク質の適正温度・・・体温に近い30℃~40℃の最適温度が多い
唾液に含まれるアミラーゼ ⇨ 約36℃~37℃が最適温度
さらに酵素が最もよく働くpHを「最適pH」といいます。
■酵素タンパク質の適正ph・・・種類によって最適pHが違う
唾液に含まれるアミラーゼ ⇨ 中性(pH=7)
胃液中のペプシン ⇨ 強酸性(pH=2)
すい液中のトリプシン ⇨ 弱アルカリ性(pH=8)
また、酵素タンパク質は温度やpH以外に「基質」の濃度によっても変わります。
基質とは、化学反応を起こすための相手となる物質のことをいいます。
酵素は基質との合成によって機能するのですが、普通の化学反応と同じように基質濃度が上がれば反応速度も上がります。
ただし、体内の全ての酵素が基質と合成している状態であれば、基質が増えても対応する酵素がないため、反応速度はそれ以上変わらないということになります。
触媒作用から見る酵素の種類
酵素栄養学で酵素は、消化酵素・代謝酵素・食物酵素に分けられますが、触媒作用から見る種類では大きく4つに分けられます。
- 「加水分解酵素」
- 「酸化還元酵素」
- 「脱炭酸酵素」
- 「アミノ基転移移酵素」
酵素の種類は多種多様ですが、なかでも一番分量が多くて重要な『加水分解酵素』群だけでも知っておく必要があります。
加水分解酵素は一番分量が多くて重要な酵素
食物を栄養素として吸収するには、食べたままの形だと吸収されにくいので、酵素の働きで分解して吸収しやすくする必要があります。
加水分解酵素は、2つ以上の材料が結合してできている化合物に水を加えることで、ひとつひとつの材料に分解するのをサポートしている酵素です。
< 加水分解酵素の種類>
■炭水化物加水分解酵素アミラーゼ・・・デンプンを麦芽糖(マルトース)に分解
■タンパク質加水分解酵素ペプシン・・・タンパク質を低分子のペプチドに分解
■脂肪加水分解酵素リパーゼ・・・脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解
■ATP分解酵素:ATPアーゼ・・・ATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分解
『加水分解酵素』群は、特に重要な成分を分解する酵素だということを知っておきましょう。
酵素タンパク質の分解・消化・吸収の仕組み
タンパク質は腸で体内に吸収されますが、分子が大きいためそのままでは吸収できません。
そのためタンパク質は、ペプチドやアミノ酸の状態にまで細かく分解されます。
タンパク質は、アミノ酸が数十万から数百万集まった状態です。
ペプチドは、アミノ酸が数個集まった状態です。
タンパク質が最小限にまで分解されると、もとの「アミノ酸」になります。
タンパク質は、「アミノ酸」になってはじめて体内に吸収されるのです。
私たちの身体や酵素にとって重要なタンパク質は、どのように分解されているのでしょうか?
タンパク質の分解から吸収までの仕組みを知ることで、タンパク質分解酵素の働きがより理解できるはずです。
タンパク質分解酵素と消化の仕組み
大半のタンパク質は、胃酸による強酸性により構造が変化してしまいます。
また胃酸の中にはタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の一種である「ペプシン」が大量に含まれています。
胃の中の胃酸とタンパク質分解酵素のコンビは最強で、ほとんどのタンパク質はバラバラに分解されます。
これにより食品のタンパク質や酵素はもちろん、細菌やウイルス類までも破壊されます。
ただし、胃の内容物が多ければ胃酸が薄まってタンパク質分解酵素の働きが弱くなるため、タンパク質の摂取量が多ければ全てを完全に分解できなくなります。
タンパク質の消化酵素には、アミラーゼ・ペプシン・トリプシン・キモトリプシン・ペプチダーゼなどがあります。
■アミラーゼ・・・唾液の中で中性付近の環境でタンパク質を分解する酵素
唾液の中では働きますが、強酸性の胃の中では何もしません
■ペプシン・・・胃液に含まれる酸性の環境でタンパク質を分解する酵素
デンプンには何もしませんが、タンパク質だけは徹底的に分解してくれます。
■トリプシンやキモトリプシン・・・すい液に含まれるタンパク質を分解する酵素
■ペプチダーゼ・・・すい液や腸液に含まれるタンパク質を分解する酵素
吸収された栄養素は様々な酵素によって形を変え、最終的には必要な生成物となって各臓器に送り届けられ酵素を通して消費されるのです。
<タンパク質の消化の過程>
❶胃で胃酸とペプシンにより「ペプトン」に分解される
食物が胃で強い酸に合うと、タンパク質の立体構造が壊れ(変性)、酸性状態で最も良く働く消化酵素ペプシンの作用を受けます。
❷小腸でトリプシンやキモトリプシンにより「ペプチド」に分解される
膵液は重曹を含み、胃酸で酸性化された食物を中和します。トリプシン、キモトリプシン、ペプチダーゼ類など、中性下で働くタンパク質分解酵素を含む膵液は、消化液中最も強力といわれています。
❸小腸の粘膜上皮にある「ペプチターゼ」によりアミノ酸に分解される
※ペプチドの状態でも種類によっては、体内に吸収されるものがあります。
ところがタンパク質は胃腸が弱っている場合には、ほとんど消化されないため吸収できずに排泄されてしまいます。
また、腸に炎症が起こっている場合には、腸壁から未消化のタンパク質が体内に吸収され、アレルギーの原因になってしまうことがあります。
タンパク質と炭水化物を一緒に食べると胃に負担がかかる
炭水化物とタンパク質は同時に消化できないため、一緒に食べると胃に負担がかかってしまいます。
- 炭水化物の消化 ⇨ アルカリ性の消化酵素が必要(消化時間=3〜4時間)
- タンパク質の消化 ⇨ 酸性の消化酵素が必要(消化時間=5〜6時間)
炭水化物とタンパク質を一緒に食べると・・・・・消化に10時間以上かかるため消化器に負担をかけるだけでなく、十分に消化されないまま小腸に送られてしまうことが多いのです。
タンパク質はアミノ酸レベルまで分解されれば、人間の身体にとって最も優れた栄養素ですが、完全に消化されない未消化タンパク質は有害になるのです。
未消化タンパク質は、腸内細菌のエサになり腸内環境を悪化させます。
未消化タンパク質が血液に吸収されると血液を汚し、様々な病気を引き起こす原因となります。
炭水化物とタンパク質を同時に沢山食べるのを避けるなど、なるべく胃に負担がかからないような食べ合わせを知っておくことも大切なことです。
タンパク質はアミノ酸の形で吸収される
タンパク質は最終的に完全にアミノ酸にまで分解され、そこではじめて腸の壁から吸収されて体全体に運ばれ細胞の材料となります。
タンパク質はアミノ酸に分解されると、小腸上皮粘膜から吸収され血液によって肝臓へ送られます。
肝臓では約2,000種の酵素が瞬時に500種もの化学反応を起こし、アミノ酸はここで新しく必要とされるタンパク質となります。
肝細胞は、1個につき1分間に60~100万個のタンパク質を生産します。
タンパク質とペプチドとアミノ酸の違い
タンパク質は大切な栄養素ですが、形態が変われば働き方が変わってきます。
タンパク質を補給する場合には、身体の状態や補給する目的によって、どの形状のタンパク質を摂るのかの選択も必要になってきます。
そのためにも、タンパク質とペプチドとアミノ酸の違いを知っておきましょう。
ペプチドやアミノ酸は、食品から必要量の摂取が非常に難しいものです。
タンパク質は、プロテインや普段の食生活で摂取する機会が多いため必要量の確保が比較的簡単です。
■タンパク質(プロテイン)・・・20 種類のアミノ酸がペプチド結合してできたもの
20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成することができないため食物から摂取する必要があります。
食品から比較的簡単に補給できますが、消化されないと吸収できない栄養素です。
また、タンパク質はアミノ酸にまで分解されてから体内に吸収されるため、消化吸収に時間がかかります。
タンパク質は、構成するアミノ酸の数や種類、ペプチド結合の順番によって種類が異なるため多くの種類が存在します。
タンパク質は、体内環境によって構造が変化(=変性)するのが特徴です。
体内でのタンパク質は、酵素やホルモンとして代謝を調節したり、物質輸送・生体防御などの働きをする一方で、エネルギー源にもなります。
■ペプチド・・・2~50程度のアミノ酸がペプチド結合したもの
ペプチドは、体内ではホルモンや抗酸化物質などとして働いているものがあります。
近年では、そのほかにもペプチドは血圧降下・血栓抑制・抗菌・中枢神経鎮痛など、様々な機能性が注目されています。
ペプチドはアミノ酸同様、分子の細かさから普段の食生活では賄うことができないもので、タンパク質よりも吸収されやすい物質です。
ペプチドは最終的にはアミノ酸まで分解されて体内に吸収されますが、アミノ酸に分解されなかったペプチドが小腸から吸収されると、ペプチドに反応してアレルギー反応が起こる場合があります。
タンパク質アレルギーは「アミノ酸」に反応するのではなく、ペプチドに反応して起こるものです。
つまり全てのタンパク質が、アミノ酸まで分解されればアレルギーは起こらないのです。
分解されなかったペプチドも、最終的にはアミノ酸まで分解されて体内に吸収されます。
■アミノ酸・・・タンパク質の材料となる最小限にまで分解されたもの
アミノ酸は神経伝達物質・ビタミンや、そのほかの重要な生理活性物質の前駆体やエネルギー源などとしても利用されます。
余分に摂ったアミノ酸は、分解されて体外に排泄されます。
アミノ酸は摂取するとそのまま吸収されるため、静脈栄養剤や経腸栄養剤として利用されています。
また、激しい運動をする時などには、アミノ酸がエネルギーとして消費されるため、アミノ酸補給は効果的です。
タンパク質分解酵素の身近な利用商品と注意点
私たちの身の回りには、様々な形でタンパク質分解酵素が利用されています。
タンパク質を分解する酵素の働きを利用した最も身近な商品といえば、洗剤や洗顔料があげられます。
酵素を配合した商品には優れた効果がありますが、注意点もあります。
タンパク質分解酵素を利用した洗剤
洗剤によく配合される酵素は、「加水分解酵素」の仲間です。
・プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)・・・皮膚表面から剥がれた角質細胞などを分解する
・リパーゼ(脂肪分解酵素)・・・皮脂汚れや衣類に付着する動植物油脂汚れを分解する
・アミラーゼ(デンプン分解酵素)・・・食品由来の汚れに多いデンプンを分解する
・セルラーゼ(繊維分解酵素)・・・閉じ込められた汚れを洗浄液中に解き放ち洗浄をサポート
タンパク質分解酵素を利用した洗顔料
毛穴の角栓・余分な皮脂や黒ずみを解消するのに効果的がある酵素洗顔は、酵素の「タンパク質と脂肪を分解する酵素の働き」を利用したものです。
洗顔料に配合される酵素の種類は主に2種類あります。
- 天然由来の酵素・・・肌に優しい酵素で注目されている(パパイン酵素・パイン酵素)
- 合成酵素・・・洗浄力はとても強く角質を根こそぎ削り取ってしまう
酵素洗顔は効果も絶大ですが実は肌にとても負担をかけているため、使い方によっては肌をボロボロにしてしまうことを知っておきましょう。
特に、タンパク質分解酵素が配合されている洗顔料は、肌のバリア機能が低い敏感肌や乾燥肌の人は注意が必要です。
場合によっては、アナフィラキシーを引き起こす場合もあるといわれています。
酵素のタンパク質を変性させる界面活性剤には注意!
これらの洗剤系の多くには、「界面活性剤」が使用されています。
界面活性剤は「水と空気」や「水と油」のように、本来、混ざり合わない物同士を馴染ませることができるものです。
洗剤は、この混ぜる働きを利用して汚れを水の中に取り込んで洗浄します。
実は、界面活性剤には、酵素のタンパク質を変性させる働きをもつものがあります。
タンパク質の変性とは、タンパク質の性質を変える働きです。
界面活性剤のタンパク質変成作用で、最も身近なものが台所洗剤による手荒れです。
雑菌を防ぐための洗剤が、界面活性剤のタンパク質変成作用によって手が荒れるわけです。
実は、手荒れは台所洗剤だけではなくハンドソープでも起こります。
特に、除菌力が高いハンドソープ(=薬用ハンドソープ)は、タンパク質変性作用が強く手荒れしやすいのです。
界面活性効果=タンパク変性作用ということを理解しておきましょう。
薬用ハンドソープで除菌ができる理由
雑菌もタンパク質でできているため、界面活性剤のタンパク質変性作用の働きで雑菌を殺しているワケです。
除菌効果の高いハンドソープほど、タンパク質変性作用の強い界面活性剤が含まれているため、手荒れしやすいということになるのです。
タンパク質分解酵素が多く含まれる食品
果物には、タンパク質分解酵素を含んでいるものが多くあります。
なかでも代表的な酵素は、果物のパパイヤ・パイナップル・キウイに含まれている酵素です。
ただしタンパク質分解酵素は熱に弱いため、摂取する際は生の状態で食べることをお勧めします。
パパイヤに含まれるタンパク質分解酵素パパイン
パパイヤには「パパイン」というタンパク質分解酵素が含まれています。
パパイヤは存在する植物の中で、分解酵素を最も豊富に含んだ植物といわれています。
パパインはタンパク質分解酵素の一種で、硬い肉でもすぐに柔らかくするほど強力です。
しかも、ほかのタンパク質分解酵素にはない、どんな種類のタンパク質でも分解する能力をもっています。
青パパイヤの酵素の量は熟したパパイヤの約10倍、さらにパイナップルの約6倍にもなります。
パパイヤの強力な酵素はダイエットや免疫向上に効果的
パパイヤは消化効果が強力なため、代謝が高まりダイエットにも効果的です。
またパパイヤにはパパイン酵素だけでなく、
・カタラーゼ・・・活性酸素を消去しアルコールの分解を促す酵素
・アミラーゼ・・・でんぷんを分解する酵素
・リパーゼ・・・脂肪を分解する酵素
・プロテアーゼ・・・タンパク質を分解する酵素
・トレハラーゼ・・・体内のインターフェロンの働きを高め免疫力を高める酵素
など、多くの酵素が含まれています。
パパイン酵素の優れた分解力や洗浄力は、あらゆる商品開発に活かされています。
<パパイン酵素を使った商品>
・ダイエット食品
・洗顔料や保湿、角質などのスキンケア商品
・入浴剤
・肉の軟化剤
・皮革の柔皮剤
・酒類や醤油の製造過程での蛋白質の清澄剤
・医薬品
など
パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素ブロメライン
パイナップルには「ブロメライン」というタンパク質分解酵素が含まれています。
ブロメラインもタンパク質を分解するもので、肉などの食材を柔らくすることで知られています。
タンパク質の分解力が強い酵素のため、食べ過ぎると胃の粘膜を刺激してしまうので注意が必要です。
胃腸の負担を減らす効果もあるため、腸の蠕動運動が活発になり便をスムーズに運びだします。
またブロメラインはルチンなどの成分と併用することで、関節炎の消炎や鎮痛に効果がある薬としても使用されています。
さらにブロメラインは、ヒスタミンを減少させる働きがあるのでアレルギー体質を改善します。
キウイに含まれるタンパク質分解酵素アクチニジン
キウイには「アクチニジン」というタンパク質分解酵素が含まれています。
キウイは、ビタミンC・ミネラル・葉酸や消化酵素が豊富なので、腸の働きが活性化され太りにくい体質になります。
ビタミンCはリンゴの17倍!
キウイに含まれる『水溶性食物繊維』には、腸内の粘膜を守り善玉菌を増加させる効果があるため、腸内環境を整えることが可能です。
また水溶性食物繊維は、食後の血糖値の上昇をゆるやかにする作用もあるため肥満の予防にも繋がります。
夕食後にキウイを食べておくと、腸の消化活動が最も活発になる“腸のゴールデンタイム”に消化され、腸の働きが活性化することで全身の血行が促進されて代謝機能が上がりダイエットに繋がります。
果物のほかにもタンパク質分解酵素は、
ヨーグルト・麹・納豆・塩辛・ゴーヤ・玉ねぎ、など様々な食品に含まれています。
特に、多くの発酵食品は、菌の繁殖だけでなく自ら酵素を生み出す優秀な食品です
▶酵素が豊富に含まれる食品や効果的な摂取の仕方については「酵素を食品から効果的に利用する方法や作り方などを徹底解説!」で詳しく解説しています。
こちらの記事では、「良質なタンパク質が酵素の生成を促すこと」「タンパク質分解酵素が消化のカギを握っていること」「種類別分解酵素の働きや効率よく吸収する食べ方」などを分かりやすく解説していますので、こちらも参考にしてください!
タンパク質補給に便利なサプリの使い方
タンパク質と一緒に脂質や糖質を摂るのを避けたい人や、効率良くタンパク質を摂取したい人は、プロテインやアミノ酸のサプリメントの活用がお勧めです。
プロテインとアミノ酸のサプリメントを使い分けることで、目的に合わせたタンパク質を効率的に補うことができます。
◆プロテイン
体内では作れない必須アミノ酸を含む「20種のアミノ酸」をバランスよく摂取できます。
またプロテインは、忙しい中でも飲み物に溶かして飲むだけで気軽に必要なタンパク質を補うことができます。
筋肉の修復・疲労回復や。日常的な栄養補給の目的であればプロテインがお勧めです。
プロテインは、即効性の効果より長期的に使用することで効果があるものです。
◆アミノ酸のサプリメント
アミノ酸のサプリは、目的に合わせて選ぶことができます。
・クレアチン・・・瞬発的なパワーを期待する場合
・BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)・・・長時間使った筋肉の修復や回復が目的
など・・・
プロテインやアミノ酸のサプリメントは、1回分の摂取カロリーがあまり高くないのでダイエットにも有効利用ができます。
まとめ:タンパク質を知ることが酵素をより正しく理解できる近道!
体内でのタンパク質は、酵素やホルモンとして代謝を調節したり、物質輸送・生体防御などの働きをする一方でエネルギー源にもなります。
体内での酵素は、私たちが生きるための「全ての代謝(=化学反応)」に関わっています。
その酵素を生成するには、タンパク質が必要不可欠です。
酵素はタンパク質を主成分として構成されているため、タンパク質の特性を引き継いでいます。
タンパク質の特性として
- タンパク質は構成するアミノ酸の数や種類、ペプチド結合の順番によって種類が異なり形態によって働き方が変わる
- タンパク質は体内環境によって構造が変化するのが特徴(特に熱や酸に弱い)
そのタンパク質を、消化・分解・吸収するために必要なのが「酵素」です。
ただし酵素が働くには補酵素と結合して、はじめて触媒作用をもつことができるようになります。
酵素タンパク質の材料となるタンパク質は、食べ物から摂取する必要があります。
食べ物から摂取したタンパク質は分子が大きいため「ペプチド⇨アミノ酸」まで分解されないと、未消化物質となり様々な病気を引き起こす原因となります。
タンパク質を分解する酵素には、 アミラーゼ・ペプシン・トリプシン・キモトリプシン・ペプチダーゼなどがあります。
- タンパク質分解酵素が属する加水分解酵素は一番分量が多くて重要な酵素
- タンパク質分解酵素を多く含んでいる食物は果物(パパイヤ・パイナップル・キウイなど)
タンパク質はアミノ酸レベルまで分解されれば、人間の身体にとって最も優れた栄養素です。
良質なタンパク質は酵素の生成を促し、様々な酵素によって形を変えていきます。
そして最終的には、必要な生成物となって各臓器に送られ酵素を通じて消費されます。
タンパク質を知ることは、酵素をより正しく理解することであり、私たちの身体の成り立ちや機能を知ることに繋がります。
「タンパク質」と「酵素」の関係は、私たちが健康に生きるための重要なカギを握っています。
正しい知識は、自分の身体に合わせた「酵素を最大限に活かす方法」を見つける手助けになるはずです。